浦和地方裁判所 昭和57年(ワ)894号 判決
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【説明】
「1 被告らの身分関係
(一) 被告A(以下「被告A」といい、その余の被告らも同様に名のみをもつて表示する。)は昭和三九年四月二三日生の未成年者で、その父である被告太郎及びその母である被告花子がその親権者である。
(二) 被告Bは昭和三八年六月二四日生で、後記の本件事件当時は未成年者であり、その父である被告一郎及びその母である被告伸子がその親権者であつた。
2 本件事件の発生
被告Aと同Bはいずれもいわゆる暴走族グループ「曼珠沙華」に属する者であるが、昭和五六年七月一二日午前一時三〇分ころ、茨城県猿島郡五霞村大字小手指一八〇〇番地先路上において、他の同グループ員多数と共同して、偶々乗用自動車に乗つて同所付近を通りかかつた原告を車から降ろさせたうえ、手拳で殴打、足蹴りし、さらに鉄パイプ様のもので殴打する等の暴行を加え、よつて、原告に対し頭部打撲症、脳挫傷、くも膜下出血等の傷害を負わせたほか、原告が運転していた自動車を大破させた(以下「本件事件」という。)。
3 被告らの責任原因
(一) 被告A及び同Bが、民法七〇九条、七一九条の不法行為責任を負うことは、右2項の事実から明らかである。
(二) 本件事件当時、被告太郎及び花子、被告一郎及び同伸子は、いずれもその親権に服する子がいわゆる暴走族グループを結成し、あるいはこれに参加のうえ非行を繰り返していることを知悉しながらこれを放置していたのであるから、法定監督義務者としての義務を懈怠したものであり、その結果、被告A及び被告Bらによる本件事件を惹起せしめたものである。
よつて、被告A及び被告Bを除くその余の被告四名も民法七〇九条、七一九条の不法行為責任を負う。」
【判旨】
一被告太郎、同花子及び同Aに対する請求について
請求原因1(一)、同2、同3(二)のうち被告太郎及び同花子に関する部分並びに同4の各事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。
二被告一郎、同伸子及び同Bに対する請求について
1 請求原因1(二)の事実及び同2の事実のうち原告の受傷の内容を除くその余の事実は当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告は、請求原因2のような被告Bらの暴行により頭部打撲、脳挫傷、くも膜下出血、慢性硬膜下血腫等の傷害を負つたことが認められる。
2 右請求原因2の事実のうち当事者間に争いのない事実及び右認定事実によれば、被告Bが、本件事件により原告が被つた損害を賠償すべき責任を負うことは明らかである(同被告が昭和三八年六月二四日生であることは前記のとおり当事者間に争いがないから、同被告は、本件事件当時一八歳であり、事理弁識能力に欠けるところはなかつたというべきである。)。
3 被告一郎、同伸子の責任
<証拠>によれば、被告Bには、本件事件以前にも凶器準備集合の非行歴があり、その際、警察から呼出を受けたことがあるが、その後も素行は改まらず不良徒輩との交際が続き昭和五六年五月ころからいわゆる暴走族グループを結成する相談に加わり、同年六月に近隣の少年二十数名で暴走族グループ「曼珠沙華」を結成し、右グループ構成員はしばしば、いわゆる特攻服など特異のみなりで集団行動を重ねていたことを認めることができる。
右認定事実によれば、被告一郎及び同伸子は、被告Bの親権者として、同被告が凶器準備集合という非行をおかしたことを知り、また、右のような暴走族グループに属し、その行動に加わつていたことを知り、あるいは、容易に知りえたと推認されるところ、かかる少年の親権者として被告Bの日常の素行及び交友関係に注意し、不良徒輩との交際をやめるよう特に十分に指導監督すべき注意義務があるのにこれを怠り、被告Bをして前記暴走族グループに構成員としてとどまるままに放置し、本件事件を惹起するに任せたというべきであるから、民法七〇九条、七一九条により、本件事件により原告が被つた損害を賠償すべき責任を負うべきである。
(高山晨 小池信行 深見玲子)